1刈香と王醮が一つになった儀式の流れ
西港刈香とその他の刈香行事の違いは「刈香巡行」と「王醮」が同時に行われることにあります。儀式は以下の流れで行われます。
一、落廟:刈香の前年の旧暦1月9日の玉皇大帝生誕日に96の村の代表が会議を招集します。
二、擲筊による主会の決定:刈香の前年の旧暦4月15日の千歳爺生誕日に擲筊を行い、千歳爺に主会首、副会首、協会首、都会首、讃会首などの決定を仰ぎます。
三、日程の決定:風水の専門家を招いて刈香の開催日程を決定します。
四、船ツァン(ツァンは舟へんに参。船の竜骨のこと)の儀式:定ツァン、取ツァン、造ツァン、請ツァン、安ツァン、合ツァンなどの儀式を順に行います。民間信仰ではツァンは王船の霊魂の根源であると考えられていることから、材料の選択、取得、製作の過程において、一連の儀式を通して宗教的能力を付与する必要があります。
五、造船儀式:安龍目(霊魂を与えて命を活性化させる儀式)、安崁巾、安獣面鏡(幸福祈願と魔除けの儀式)、安梁頭、王船のマスト立て(全工程の終了を意味する儀式)、進水・出港(大勢で船をわずかに押し動かして水を船体と地面にかけることで正式な試験航海の始まりを意味する)などの儀式を執り行います。
六、擲筊を行って旗牌官と王船の神職者を決定します。
七、起造王府、豎灯篙:刈香が正式に始まる1カ月に建造を始めます。
八、南巡:刈香の半月前に慶安宮の千歳爺が南下して台南を「南巡」します。
九、請王:刈香の2日前に南埔王船地でその年の千歳爺と神々の神輿に巡行を願い出て、千歳爺に王府に戻って安座するように願い出ます。
その後の刈香巡行の流れ:
十、請媽祖:刈香の前日に鹿耳門天后宮へ行き、媽祖を迎える「請媽祖」の儀式を行います。
十一、刈香巡行:刈香は3日間続き、千歳爺が96の村を巡行します。その光景は壮大で、60以上の神輿と50組以上の陣頭を含む数多くの隊列が参加します。隊列の多くは村落の神輿と文武陣頭で構成され、「蜈蚣陣」を先頭に巡行は3日間続き、香科大醮典のハイライトとなります。
その後の王醮の流れ:
十二、王醮科儀:刈香の前日から慶安宮で王醮科儀(道教の儀式。群がる悪霊を抑えつける「関祝五雷神灯」や「和瘟酌献」などの数多くの複雑な儀式が行われ、和瘟の儀式を通じて悪霊を遠くへ追い払います)、王府の儀式、宴王大典(王爺が駐駕した後、王を送り帰す儀式「送王」の前夜に宴席を設けて王爺をもてなす儀式)が執り行われます。
十三、送王:「宴王」、「点艙」の儀式を行った後、「拍(打)船醮」の儀式を通じて王船に兵馬を呼び集めて航路を切り拓き、疫病神や疫鬼を連れ去ってもらえるように千歳爺を見送ります。