六房媽過炉の儀式は300年以上にわたって受け継がれてきたもので、雲林県の斗六市、斗南鎮、虎尾鎮、土庫鎮、大埤郷などの5つの郷鎮市内にある里、村、社区から組織される土庫股、斗南股、五間厝股、大北勢股、過渓股の「五股」が毎年交代で祭祀を担当します。各股ではさらに小さな組分けがされており、例えば、斗南股は5年ごとに一度祭祀を担当しますが、斗南股の管轄下には5つの炉があるため、各炉に順番が回ってくるのは25年に一度となります。また、毎年旧暦2月の第1土曜日または日曜日にその年の旧暦4月の徒歩巡行過炉の日程が決定されます。
六房媽は旧暦4月に毎年異なる場所に祀られます。六房媽の祭祀を主催する「股」が日程に従って「炉主」を選出し、六房媽を祀る「紅壇」を設置するとともに作業の引き継ぎを手配し、六房媽の神像と公有財産の保管を担当します。紅壇とは神様を一時的に安座し、信徒が参拝するための場所で、仮設用の建材が使用されることと伝統的な寺院に見られる装飾芸術が施されないこと以外は一般的な寺院と大きな違いはありません。六房媽過炉は閉鎖的な宗教活動であることから、紅壇の祭祀儀式には台湾の伝統的な古い儀式が数多く残されています。
六房媽過炉の巡行において最も人情味が感じられるのが「分旗脚」と呼ばれる風習です。これは、五股のうち六房媽の祭祀を担当する股の信徒は過炉巡行に参加する必要がないため、食べ物や飲み物を準備して、苦労して巡行する他の四股の信徒をもてなすというものです。巡行に参加した隊列が全行程を歩き終わると、祭祀担当の股の里長が他の股の人々を招いて食事をふるまいます。これは「接頭旗」と呼ばれる習慣で、ほとんどの人にとって5年に一度しか訪れない場所で、食事がふるまわれる場所も毎回異なり、お互い面識はないものの、会場には和やかな雰囲気が漂います。