水仙宮には1948年の改修当時の泥塑に色絵を施した作品が多数保存されています。正殿後方には唐朝の名将・郭子儀(698または697~781)の老後の豊かな生活を表現した作品「富貴図考」があり、大殿の脇には「忠心孝恩」、「神槍暗伝」、「轅門斬子」、そして剥離のためにまだらとなり、識別不可の作品1点があります。泥塑に色絵を施したこれらの作品は数十年の歳月の中で「塩害」による剥離が進んでいますが、それがかえって古い味わいを生み出しています。これらは名匠・江清露(1914~1994)が完成させた泥塑に色絵の巨匠・陳玉峰(1900~1964)が色付けをしたもので、全国でも水仙宮でのみ見られる組み合わせとして有名です。また、前過水廊の左右に見られる拾玉環、貂蝉嘆月、貴妃酔酒、送京娘の4つの美人図は、剥離が生じているものの今も絶世の美しい容姿をとどめています。
後殿両側の切妻には160年余りの歴史を持つ泥塑図「南極塁輝月」と「瑤姫献寿」があり、その繊細で美しい外観からは当時の繊細な絵画技術がうかがえます。
三川門の明間と左右の次間の計6つの門に施された門神の色絵は、色絵の巨匠・陳玉峰の遺作の中でも全国で最も保存状態のよいもので、門神は生気に満ち溢れており、威風堂々としながらも厳粛さを感じさせません。2009年にはドイツの著名な壁画修復職人を招いて復原式古跡修復法を用いて修復作業が行われ、台湾国内で初めて国際博物館級の方法で修復作業が行われた伝統的な廟門となりました。
正殿前にある一対の蟠龍の石柱は素朴な造形と簡潔な線の中に重厚感も併せ持っています。落款には1780年に笨港の貢生・林開周(生没年不詳)から寄贈されたことが記されており、水仙宮の落成の重要な証拠となっています。
水仙宮側面の切妻は三川門から前過水廊、拝殿、正殿、後過水廊、後殿にまで及び、燕の尾のように反り上がった燕尾脊、美しい曲線、そして幾重にも連なる層によって白の美しい切妻が形作られています。また、その下に配置された鳥踏(切妻の壁面に突出した水平の装飾)と相まって、この上ない視覚効果を生み出しています。