毎年参加する陣頭の隊列には次のような決められた順序があります。1、報馬仔。2、頭旗、頭灯、三仙旗。3、道を先導する楽団「開路鼓」。4、頭香、弐香、参香、賛香などの隊列。5、繍旗隊。6、福徳弥勒団。7、弥勒団。8、太子団。9、神童団。10、哨角隊。11、荘儀団。12、三十六執士隊。13、神輿前の楽団「轎前吹」。14、馬頭鑼。15、涼傘。16、令旗。17、媽祖の神輿「鑾轎」。18、自転車隊。
毎年元宵節に「擲筊」で出発の日時を決定し、搶香に参加する団体と寺院が共同で「頭香」、「弐香」などの順番を決定します。「頭香」、「弐香」などを務める各団体がそれぞれ劇団を招いて媽祖の生誕を祝うパフォーマンスを行い、進香には伝統武芸「芸陣」も同行します。出発前に鎮瀾宮で進香の「頭旗」が左側の龍柱に結びつけられ、道中の停止地点や駐駕地点では、媽祖が鎮瀾宮を出発する時間、戻る時間、各地を通過する時間を信徒に知らせる「香條」と呼ばれる紙が張られます。
清朝時代、大甲の53の村の名主たちが集まって、交代で媽祖の進香を担当することについて話し合いましたが、53年に一度しか順番が回ってこないこと、そして村ごとの貧富の差で、費用を負担できない村があることが問題となりました。そこで、線香を奪い合う「搶香」という方法が取られ、参加を志願する村の中から選ばれた「頭香」、「弐香」、「参香」が巡行とその費用を負担し、その代償として、鎮瀾宮に戻った鑾轎を迎え入れてお香を捧げ、代表して祭祀儀式と幸福祈願を執り行う権利が与えられるようになりました。
台湾で行われる巡行の隊列において、神様に道を案内し、情報を伝える役割を担っています。銅鑼を鳴らし、信徒に向かって香案を準備して媽祖の神輿を迎えるよう呼びかける様子は、数多くの媽祖巡行で目にすることができます。多くの報馬仔は頭に笠をかぶって、蓑、黒の服、羊毛の上着を身につけ、黒縁の老眼鏡をかけて、燕の尾のようなひげを生やしています。さらに、キセルのタバコとひょうたんのお酒を抱え、食べ物に困らず長生きできることを意味する豚足やニラなどの食べ物を持ち歩いています。足に貼られた様々な色の紙は膿瘍などの災いを表し、人生において避けられない災難を表現しています。片足だけわらじを履き、裾をまくり上げた滑稽な格好が特徴的です。
「頭旗」は隊列の一番前に立つ信徒が持つ媽祖を象徴する大きな四角形の黄色い旗のことを言います。旗には「大甲鎮瀾宮天上聖母、頭旗、遶境進香」などの文字が刺繍されており、旗頭には木彫りの赤いひょうたんと2つの赤い玉総が装飾され、ひょうたんには線香が刺さっています。頭旗の両脇に立つ「頭灯」には進香団に代わって遠くを照らす役割があり、灯には八仙が描かれ「大甲鎮瀾宮天上聖母、遶境進香、合境平安」などの文字が記されています。頭旗と頭灯の後ろに続く「三仙旗」は、中央の黄色い旗が媽祖を表し、両側の青い旗が護衛の役割を担っています。進香において、媽祖を迎える団体が増加したことに伴い、頭旗は隊列を率いるだけでなく、こうした団体にも対応しなければならなくなったことから、隊列が停滞しないよう、頭旗に代わって進香団を率いる役割を担う三仙旗が設けられました。
繍旗隊は1963年に女性巡礼者のために組織されました。当初は進香の隊列の充実を図るために設けられましたが、年々その規模は拡大し、台湾で最大規模の繍旗隊へと発展を遂げました。参加者の申し込みは旧暦1月15日の元宵節から鎮瀾宮で受け付けられます。参加人数は最大300人までとなっています。
神輿の前に位置する哨角隊と馬頭鑼は主に厄除けの役割を担っています。当初哨角は2つだけでしたが、年々増加して、現在では数十の哨角が用意されています。哨角とは重厚な低音を鳴らす銅管楽器で、道中では馬頭鑼が13回鳴らされたら哨角を鳴らします。力強く鳴らされる馬頭鑼の大きな音で橋や墓地、喪中の家を通る時に厄を払うのです。
現在、大甲鎮瀾宮の執士隊には一対の龍鳳旗、12枚の彩牌、18の武器があり、龍が前に立ち、鳳凰が後ろにつきます。主に行進中に喪中の家を通りかかった際、道を遮る邪悪な悪魔や無実の罪を媽祖に訴える亡霊を退けるために媽祖の神輿を囲んで護衛する役割があります。
大甲媽祖巡礼中、道中では信徒が香案を準備して媽祖を迎えます。媽祖進香団の通り道では、ひざまずいて媽祖を迎える信徒や媽祖の神輿に背中の上を跨いで行ってもらおうと一列に並んでひざまずく「鑽轎脚」の様子が見られます。民間では、こうして神輿の下をくぐることで加護を得ることができると考えられています。