秀姑巒渓の河口の北岸にある港口部落(Makotaay)は台湾東海岸におけるアミ族の主な発祥地の一つで、現在でも年齢による厳しい階級制度や「海祭」、「ilisin祭」などの伝統的な祭儀、音楽、舞踏が守られています。祭典は全て年齢階級組織によって計画、実施され、階級ごとに分担して各自の任務を遂行し、完了させます。その中でも7月下旬に催されるilisin祭は最も特徴的で、アミ族の人たちは出来る限り帰郷して祭典に参加します。
港口集落で催されるilisinの祭典では、集落の男性が参加する儀式は計4日間、女性が参加する儀式は最後の1日で、男女別々の日程で各自の祭典を行います。舞踏の際、女性は反時計回り、男生は時計回りに向かって踊り、未婚の男女が知り合う場となる「Pakayat」と呼ばれる夜にのみ男女が一緒に踊り、互いの気持ちを打ち明けることができます。これはアミ族の中でも珍しい風習です。
毎年初日の夜10時に開始される「迎霊祭」は翌日の朝10時まで一晩中続けられます。集落の頭目が港口天主堂の後方にある広場で神様と先祖の霊を迎え入れ、たいまつを手に広場へと向かう吠犬階級(山の斜面で栽培する作物の見張り番。作物が収穫時期を迎えると、吠犬階級は山から集落へと戻り、集落の人たちは盛大な祭典で迎え入れる)を出迎え、夜明けまで歌い続けます。これはアミ族のilisin祭典特有の伝統です。
港口集落に現在まで受け継がれている伝統の祭典ilisinの会場ではマイクは使用されず、1人または複数人がアカペラで合唱をリードし、原住民の伝統の祭典に響きわたる天籟のような美しい歌声が観衆に感動をもたらします。この歌声はアミ族の伝統文化祭典における大きな特色に挙げられます。