馬祖には馬港境、津沙境、金板境の3ヶ所にそれぞれ一つ天后宮があり、近代において馬祖南竿郷の各天后宮ではほぼ全面的な改修工事が行われていますが、金板境天后宮だけは一部の修繕工事のみに留まっているため、閩東建築の特色が今も残されています。封火山牆(中国南部の集落に見られる用地を節約する特殊な建築工法。中庭の間に建物よりも高い山牆を設けて隔てることで、火災が発生した際に火が他の建物に燃え広がらないようにする)が残されているほか、廟内の木造構造には福州杉が用いられ、穿斗式(古代中国の木造構造の建築工法。梁を設けず、柱で桁を直接支える)の構造が採用されています。もともとは屋根の庇と正面部分は板壁でしたが、木造構造を保護するためにレンガ造りに変更されています。東西の廂房は「廟中廟」と呼ばれる木造構造が採用され、神棚には「落地罩」が設けられ、非常に珍しい外観を呈しています。
金板境天后宮に祀られている天上聖母(媽祖)の神像は、馬祖で唯一の泥塑の媽祖像であるだけでなく、台湾各地の媽祖廟に祀られている媽祖神像とは異なる造形となっています。台湾の媽祖神像の多くは少し年上の「聖母」のような女性の姿をしていますが、金板境天后宮の正殿の媽祖は圭板を手に持った少女の姿をしており、清楚な気品を感じさせます。
焼塔の民俗文化は閩東地方一帯に起源があり、中国福州地方から馬祖に伝来したものです。この中秋節の民俗行事は現在台湾では馬祖鉄板村にしか残されておらず、焼塔の際に廃棄物を一緒に燃やす風習には、古いものを取り除いて新しいものを打ち立てるという意味、そして物を大切にするという意味が込められています。焼塔節で建てられる塔は、高さ約1メートルから3メートルと様々で、瓦の破片を積み重ねて建てられます。大型の塔はレンガを塔の全高の4分の1まで積み重ねた後、残りは瓦を積み重ねて建てられます。塔の上部には木、竹、籾殻などの燃料を入れるための穴が設けられ、火の勢いを強めるロジンの粉末や火花を散らす塩が加えられることもあります。
焼塔節の競技ルールはとても簡単です。塔全体を真っ赤に燃やし、火の勢いが最も激しい人の勝ちとなり、火の勢いが十分でない場合や塔を燃やしている途中で瓦が倒壊した場合は失敗となります。勝者には錦の旗や賞金、賞品が贈られます。近年では、一般参加者に断ち切りたい悪い習慣や不安なことを書いてもらい、焼塔節で一緒に燃やして厄払いを行うための厄除けカード「除穢卡」も準備されています。