中国・西洋の工法を用いて芸術、学術、宗教、文化の一体化が図られ、荘厳かつ雄大な外観からは「自心を悟れば、直に成仏に至る」という禅の心が感じられ、伝統と創造が調和しています。最も目を引く最上部の金の蓮の花びらは、最大のもので高さ4.4メートル、幅3メートルあり、異なる金型を使って成型された銅板を組み合わせた7枚の花びらが昼夜を問わず輝いています。左右両側にそびえ立つ錫杖は、開山した惟覚和尚の指導のもと設計されたもので、高さ28メートル、底部は直径2.5メートルあり、先端部分には菩薩の願いである回小向大(自己の悟りを重視する「小乗」から他者の救済を優先する「大乗」へと転向すること)を象徴する造形が施されています。さらに、錫杖の柄には空に昇る九龍の彫刻が施され、雲の下には経文が記されており、中台禅寺の大きな特徴となっています。
四天王殿は敷地内の中心にある主要建築の首殿にあたります。中央に弥勒菩薩が祀られ、その後ろには合掌して戟を持つ護法神・韋駄天菩薩が構えています。殿堂の四方には、東の持国天王、南の増長天王、西の広目天王、北の多聞天王という仏法を守護する四大天王が祀られています。荘厳でありながら猛々しいこれらの神像は「山西黒」という花崗岩に彫刻を施したもので、それぞれ高さ12メートル、重さは100トン以上に達します。最も特徴的なのは、四天王像一体一体に自身の頭だけでなく他の3体の天王の頭も並んで彫刻されているという点で、各天王が4体分の功徳を有し、四天王が一つとなることで、神力と威徳をもって仏法の守護にあたることを象徴しています。
大雄宝殿は中台禅寺の正殿にあたり、主要建築の2階にあります。中央に祀られた、インド産の赤花崗岩で彫刻された釈迦牟尼仏像は、深い叡智に満ちた厳かな佇まいで、その両脇には釈迦の弟子の阿難尊者と迦葉尊者が並んでいます。殿内は赤と灰色を基調にしており、五濁悪世に現れた釈迦が衆生を救済する様子が表現されています。仏像の後部では台座から天井まで届く大きな後光が放たれており、中央の蓮華から現れた化仏が浮き彫りで表現されています。また、右回りの8つの光は、千百億の釈迦の化身が八正道(仏教徒が最高の境地「涅槃」に至るための8つの修行法:正見、正思惟、正語、正業、正命、正精進、正念、正定)をもって法輪を転じることを表しています。
地蔵殿にはブラジル産の白玉に彫刻された大願地蔵王菩薩が祀られています。手に錫杖を持ち、伏し目がちで厳かな表情を浮かべ、「六道」の模様が浮き彫りされた蓮華座に座っています。六道とは、天道、修羅道、人間道、畜生道、餓鬼道、地獄道という6つの世界を輪廻するという仏教特有の考え方です。地蔵王菩薩は地獄の苦しみから衆生を救うため、「地獄から人がいなくならない限り、誓って仏にはならない」という願いと誓いを立てたと言われており、そのため、左手には「地獄の門を開く」錫杖を持ち、右手には「天国への道を照らす」珠を持っています。また、後ろの壁に刻まれた一万文字を超える『地蔵王菩薩本願功徳経』全文は台湾で最大規模と言われています。
2009年10月3日に開館した中台山博物館は国内外の信徒から寄贈された歴史的文化財を収蔵しており、不定期に仏教文化財展を開催して、仏法の芸術化を図ると同時に、仏教文化財の展示を通じて、仏教の歴史・文化に対する人々の理解の促進に取り組んでいます。
中台禅寺の主要建築の隣に位置する鹿野園は、釈迦が初めて教えを説いた「初転法輪」の地とされるインドの鹿野苑を記念したもので、園内には草木が生い茂り、参拝者が光明鐘と呼ばれる鐘をつくことができる鐘楼が設けられています。唐建築を模した外観が特徴的なこの鐘楼は福州杉を使って建てられたもので、背面には蟠龍の装飾が施されています。また、地蔵王菩薩が祀られた仏壇の後方には、叩鐘の偈、聞鐘の偈、鐘をつくことに込められた意味が記されています。