山門の屋根は重檐四垂頂という様式です。重檐とは4つの斜面からなる屋根の上にもう一つの屋根が乗っているもので、屋根をより高くそびえ立たせ、雄大さと荘厳さを引き立たせる効果があります。
藻井とは華人の伝統建築において最も立派な天井の装飾で、室内を荘厳かつ華麗に彩る効果があります。その名前には水面を覆う「水藻」のように天井を覆って守るという意味が込められているほか、華人の伝統建築の多くは火に弱い木造だったことから、藻井は井戸の象徴でもあるのです。藻井には、円形、四角形、六角形、八角形などの様々な造形があり、その周辺には彫刻や色絵による装飾が施されます。同寺院の八卦藻井は台湾でも屈指の作品で、1831年の改修工事の際に建造されたものであり、台湾に現存する最古の作品です。この藻井は舞台上方に設けられており、演劇の際には共鳴効果を作り出します。
大殿の神棚の真ん中に祀られている唐風の銅観音仏像は「七宝銅観音」とも呼ばれ、七宝五仏冠をかぶり、両目を軽く閉じ、両手で禅定印を結び、結跏趺坐と呼ばれる姿勢で座っています。唐風の造形を持つ典型的な明朝末期の作品です。
拝殿の龍柱は1852年の改修工事の際に造り直されています。とぐろを巻いた1頭の龍が装飾された蟠龍柱に一部透かし彫りが施されており、4つの爪で珠を掴み、口元に珠をくわえて2本の牙を覗かせる様子が生き生きと表現されています。柱の後ろ側の上方に鳳凰、麒麟、鶴、亀といった中国で縁起がいいとされる動物が彫刻されていることから「四霊柱」とも呼ばれ、非常に希少な鳳凰の羽毛と麒麟の足跡、長寿の象徴である鶴と亀をもって「鳳毛麟趾、鶴算亀齢」という言葉に例えられています。
5つ門があるため「五門殿」と呼ばれ、真ん中の門には門神として仏教の二大護法神「韋駄天」と「伽藍神」が描かれ、残りの4つの門には仏教の四大金剛が描かれています。これらは全て鹿港の色絵の名匠・郭新林(1902~1973)の作品で、郭新林は他にも龍山寺内の多くの色絵を手がけています。五門殿前に立つ一対の龍柱は1831年の改修工事の際の作品で、吉祥を表す彫刻が施されており、「十全十美」を表現すべく2本の柱に白い鶴がそれぞれ5羽ずつ刻まれ、その鶴は「長寿如意」の意味を込めて如意の形をした霊芝をくわえています。また、入り口に設けられた一対の石鼓(門柱と門を補強するための構造)にはそれぞれ蓮花を持った子供と芭蕉を持った子供の彫刻が施されており、これは子宝に恵まれることを意味しています。