第一ビルにある大殿は法鼓山の精神的中心地で、その造形と建築材料は30年以上前に聖厳法師が禅定中に幾度となく目にしていたという聖殿をもとにしています。殿内は高さ16メートルで、素朴で優雅かつ雄大な佇まいが表現されています。隣には引礼室と香灯準備室があり、中央には仏壇と教壇が設けられ、仏像の左右両側には小さな仏像を収蔵する光明灯があります。仏壇と光明灯は石窟をコンセプトに設計されたものです。大門の上部に掛けられた「本来面目」の扁額は入寂した聖厳法師が記したもので、禅の思想が強く感じられます。
大殿に祀られている「三宝仏」(釈迦牟尼仏、西方阿弥陀仏、東方薬師仏)は中国の隋唐時代の石窟の仏像彫刻の技法を採用したもので、青銅製で輪郭は滑らか、顔は厳かでふっくらとしており、2つの特徴があります。一つ目は、中国山東省にある四門塔の阿閦仏を手本としている点で、この仏寺にある古い仏像はどれも長方形の須弥座に座していることから、大殿の仏像も一般の伝統的な蓮の台座ではなく、正方形の須弥座に座しています。二つ目は、3体の仏像の須弥座の周囲に台湾原生で保護種に指定されている動植物を題材とした浮き彫りが施されている点です。まるで山水画のように、遊魚、爬虫類、飛鳥のほか、台湾固有種のヤマムスメ、タイワンジカ、ミカドキジ、キョンなどもまるで本物のように生き生きと表現されており、非常に高い芸術的価値を秘めています。
2006年に園区内の法華公園に設置された法鼓山の宝「法華鐘」は日本の「老子株式会社」が青銅で鋳造したもので、唐の様式を模しており、重量25トン、高さ4.5メートル、直径2.6メートル、最も厚い部分は29.6センチメートルで、本体に計69,636文字の『妙法蓮華経』と424文字の『大悲呪』及び多宝塔双仏並坐図が刻印されています。世界的かつ歴史的な仏教法宝物であり、世界最大ではありませんが、世界で初めて本体に『法華経』全てを刻印した青銅製の梵鐘です。法鼓山では毎年大晦日に鐘を鳴らして幸福を祈願する法会を主催しており、108回の鐘の音とともに台湾の幸福が祈願されます。
大殿の後方にある禅堂は法鼓山の禅修センターで、禅堂内に祀られている釈迦牟尼仏像は当代の石刻芸術の名匠・林聡恵(1937~2002)がミャンマーの石材を使って制作したものです。まっすぐに座した仏像は清らかな輝きを放ち、造形はシンプルで、右手は「説法印」、左手は「持定印」を結んでいます。仏座は16枚の花びらの仰蓮座で、原石の自然な紋様が残る仏像と禅堂内の自然・静寂・接心の感覚が一つとなり、安らかな心地よさを表現しています。
法鼓山の法脈が伝承する様々な文物が展示されています。8つの展示エリアでは、写真と解説文付きで、法鼓山精神の源流、開山の歴史、教育推進の内容を詳述しており、仏教の伝承と継続に関する展示が行われています。また、特別展示エリアでは、常設展示のほか、毎年不定期で様々なテーマの展示も行われています。また、流芳堂‐菩提祈願エリアでは、願い事を菩提樹の葉に書き記して祈願することもでき、ともにこの世の浄土の実現を目指しています。