一般的な廟では正殿と三川殿に藻井が見られますが、祖師廟では李梅樹の提案によって各殿内に暗厝形式の藻井が設けられており、変化を追求した様式が特徴的です。その中でも正殿上部の螺旋網目藻井は特に際立っており、螺旋状の設計が「子孫が途絶えずに繁栄すること」を表し、内側が丸く外側が四角い構造は華人の宇宙観を表しています。さらに特徴的な点は、一層一層上に向かっていく特殊な木彫りの技法です。この技法は難易度が高いだけでなく建造費も高くつき、維持も容易ではありません。これは祖師廟の正殿内で焼香が行われない理由でもあります。
梁と柱の間や三川殿にも見事な木彫りが見られます。材料にはヒノキやクスノキを使用し、人物の彫刻は主に民話、神話、伝説を題材としており、立体的で生き生きとした花や動物、人物が彫刻されています。正殿と龍門庁の藻井の下にある16匹の鳳凰は最も見事で、その中でも龍門庁の4匹は彫刻家の林松(生没年不詳)の遺作で、透かし彫りの技法を用いて、ふくよかで生き生きとした鳳凰が表現された非常に貴重な作品です。
三峡祖師廟は台湾で最初に銅彫刻による装飾が用いられた廟です。三川殿の門神はその代表作であり、明間、左右の次間、龍虎門の計10枚の門に、哼哈二将、四大天王、加冠晋禄、栄華富貴の装飾が施されています。当時、木製の門に色絵を施すという伝統を捨てて銅彫刻を採用した背景として、色絵は焼香の煙やほこりによって破損しやすいという李梅樹の考えがありました。そこで顧問団からの提案で銅のレリーフが採用され、当時の国立芸術専門学校彫刻学科の学生の協力を得て作業が完了しました。