基隆市中正公園の獅頭山頂にある「主普壇」は、1976年に建てられたもので、鶏籠中元祭で最も重要な中元普渡(供養)の主な祭場です。1階建ての基礎と3階建ての主体からなる4階建ての建物で、塔は八角形をしています。その両側には六角形をした二重の翼楼があり、翼楼は六角形をした一重の基礎の上に建てられています。外観は中国の古楼様式で、前に突き出た軒が美しいラインを描き、塔の最上部からは基隆港の景色を一望できます。中元祭の約1カ月前になると、その年の中元普渡(供養)を担当する宗親会によって、主普壇の周囲に木材で主普壇と同じ高さの牌楼(装飾用の建物)が建てられ、正面には道士が祭壇に上がるための階段が設けられます。また、無縁仏が一時的に滞在するための場所も設けられます。牌楼の周辺には5色の丸型LEDランプが取り付けられ、ガラス繊維で作られた龍柱が置かれます。さらに、木材と「蘭盆勝会」、「慶讃中元」、「主普姓氏」、「龍鳳呈祥」などの縁起の良い模様で外観が飾られ、毎日夜になると明かりが灯されてインパクトのある姿に変わります。主普壇は1997年に改装され、鶏籠中元祭の伝承が150年を迎えた年には主普壇の1階に80坪の「中元祭祀文物館」が設置されました。館内は、文化財展示エリア、特別展示エリア、マルチメディア映像エリア、魔幻劇場、親子向けゲームエリア、資料閲覧エリアの6つの展示エリアに分かれており、鶏籠中元祭の歴史写真、文化財、祭祀の流れの紹介など、多くの資料が展示されています。
旧暦7月13日の迎斗灯は、鶏籠中元祭の重要な儀式の一つです。斗灯とは道教の道具で、寺院で行われる儀式の中で魔除けや幸福祈願に使用され、各宗親にとって神聖なものでもあります。普段、斗灯は基隆慶安宮に奉納されており、迎斗灯では市内を巡行します。斗灯に火が灯された後は、その火を絶やさないようにし宗族一族の繁栄を祈願します。各苗字の斗灯は民俗芸術の職人によって製作され、非常に美しく、高い民俗芸術的価値があります。
鶏籠中元祭の旧暦7月14日の灯籠パレードには100年以上の伝統があります。当日の夜7時、各宗親会と招待を受けた地元チームや学生によるパフォーマンスチームが田寮河のほとりに集まり、そこから出発して市内をパレードし、各苗字の灯籠が迎えられます。これは単なるパレードではなく、「大士爺」が市内を巡行して地域の安寧を守り、基隆の4大廟(慶安宮、城隍廟、奠済宮、田都元帥府)に幸福を祈願するという意味も込められています。宗族による壮大なパレードに加えて、様々なチームによるパフォーマンスが行われ、近年では、宗教や民間の物語をテーマにしたものや可愛いデザインの山車がパレードに加わり、華やかに飾られた芸術的な山車や世界各地から訪れた芸術性の高いパフォーマンスチームが注目を集めています。力強いリズムの音楽に伴い、驚きや賞賛の声が次々と湧き上がり、大勢の人々が深夜まで祝い続ける様子は、まるで文化を内包するカーニバルのようです。
灯籠パレードが終わると、各苗字の灯籠が「望海巷」に集まり、一時的に安置するための灯籠流しの儀式が行われます。読経が終わり、紙銭が燃やされ、爆竹が鳴らされると、最後には各苗字の灯籠に導かれ、灯籠が海に向かって流され、水中のさまよう霊を供養します。この儀式は中元祭のクライマックスでもあります。
鶏籠中元祭の中元普渡(供養)は、毎年旧暦7月15日の夜7時に基隆中正公園の主普壇で行われ、さまよう霊をこの世に迎え御馳走をします。この儀式において重要なお供え物の一つに看桌米雕と呼ばれるものがあります。これは、原色のパン生地をこねて、鳥や動物、果物や野菜、昆虫、道具などの形にしたもので、非常に見応えがあります。主な祭場である「主普壇」では、その年の中元普渡(供養)を担当する宗族が祖先の名誉のため、多くの資金を投じて装飾を施します。夜になり色とりどりの明かりが灯されると、超大型の灯台のようになり、一瞬にして基隆市内で最も明るく輝くランドマークとなります。数十キロ先まで届く光は、まるで祖先を祭祀に招くために道を照らしているかのようです。